弊社スタッフが交替でお届けする、ときに鋭く世相を斬り、ときに緩やかにあなたを癒す珠玉(?)の時事エッセイ。お仕事中の息抜きなどにお読みいただけたら幸いです。

2012/03/01 第51回  日本と民主台湾(李登輝元総統)


2012年、世界の国々は指導者の交代期であり、民主化への畝りの激化、財政危機国の拡大等々、激動する星、地球である。
この「築城通信」は50回を重ね「日本国」を軸に世界の中の日本として将来像を描く材料として提供して来た。第51回は、日本と深い関係にありながら遠い存在の民主台湾(中華民国)を採り挙げる。と申しても自分にとっての民主台湾の主役は李登輝元総統である。(以下、中華民国を台湾に中華人民共和国を中共と記す)
1月14日台湾総統選挙が与党国民党馬英九候補(現職)と野党民進党蔡英文候補の間で争われた。結果は馬候補6,881,307票、得票率51.28%は6,088,958票46.64%の蔡候補を敗り民主台湾5代目の総統に就く。国民党馬英九総統は前任期の経済発展を実績として強調、台湾は豊かになった!!と。そして、中共の台湾併呑(統一)は無いと言いつつ、中共との経済的結びつきを更に推進して行くという。

民進党蔡英文候補には、台湾を民主化へ導いた李登輝元総統(中華民国蒋介石初代総統、蒋経国に次ぐ国民党三代目の総統で1990年就任、1996年国民の直接選挙にて初当選、国民党蒋介石父子の独裁政治国家を民主台湾へ導いた人)の支援を最大限受けたが惜敗する。台湾経済は中共依存度が高く、首根っこを抑えられているのである。国民も併呑(統一)は望んでいないが、経済依存による豊かさは失いたくないという複雑な心境なのである。
この総統選挙では中国在住のビジネスマンが数十万人単位で投票のため帰国する負担に、中共政府は大いなる便宜を図り、馬候補を後押しした。(不在者投票制はない)勿論、台湾メディアを牛耳る中共資本の影響力も大きく、馬候補国民党優位に導いたのである。日本も同じである。既に経済は中共に大きく依存、外交に於いても首根っこを抑えられて、国家としての言質は「曖昧糢糊」としてさっぱり理解出来ず、消化不良は国の容を溶解させる。

民主台湾への道を拓いた李登輝元総統は88歳の多事多難な人生を振り返って『日本統治下で受けた教育があったからこそ、肯定的な人生観を持つことが出来た』と語る。
日本の台湾統治は1895年~1945年の50年間である。李氏朝鮮(大韓帝国)の統治は1910年~1945年であり日本国の統治理念には差異はなく、同じ理念の下で治めたのである。
統治される側にはそれなりの苦労はあったと考える。それでも、台湾は統治時代に建設され、現在も使われている烏山頭ダム、用水路を作った八田與一の功績を現在に伝える。その記念碑に馬英九候補は選挙期間中に参ったという。
台湾の人々の心には李登輝という偉人の情意に通じるものがある。
翻って同じ理念の下で統治された当時世界での極貧国李氏朝鮮が統治下の35年間を否定する愚は悲しむべき性である。又、歴史観認識を捏造して教育の柱に据えた国々との付き合いに日本国は、自虐史観からの決別を宣しなければ新生日本! 3.11大災害からの復興、再生日本に絶対に繋がらないのである。

新生日本に向けて国内政治情勢が騒がしくなって来た。大阪都構想を掲げた橋下徹前大阪府知事は「平成維新の会」を結成して大阪府での権力を掌中にし、大阪市長選挙にて知事から市長に鞍替えして、更に国政への参画を滲ませ、国政に揺さ振りをかけている。国政はご承知の通りの為体故に政界再編へ進もうとしている。既に破綻した民主党政権はマニュフェストが形骸化しても恥じず、政権に固執する亡国集団と化している。

長期デフレ不況の続く失われた20年は内政、外交共国の存在感を世界に示すことは出来なかった。故に橋下徹が現われ多くの国民の支持を受け増々猛進する勢いは、小泉郵政選挙時、民主党政権誕生時の国民の熱狂に似て??危うい!
明治維新近代日本の原動力となった坂本龍馬の「船中八策」に倣い、橋下徹の「大阪維新の会」が維新版「船中八策」を発表。石原慎太郎東京都知事は、この八策には大賛成の所もある。と評価するが、新党結成の折は独自の八策を作るという。何故「船中八策」なのかという点を理解しなければならないのである。維新八策提起の今日と、龍馬が生きた時代背景を考えれば龍馬の船中八策は維新八策にはない高い理念である。維新八策は今日まで提起され続けて来た内容であり、実現出来なかった内容で、推進もしてこなかった内容である。故に改めて提起する背景となる力を自ら創造し進めて来た橋下徹(Machiavellian?)に国民が注目しエールを送るのである。(希待と危うさを併せもつ)ここで維新八策と龍馬の船中八策を並べ、更に李登輝元台湾総統が2010年日本商工会議所主催フォーラムで講演した“日本の若者たちよ!平成維新に立ち上がれ!”を纏めて記す。

両策を比較すれば、政策の列挙と新しい国家創造の理念との違いであり、現在求められているのは、戦後体制からの脱却であり、その為の日本国の在り方、即ち国のIdentity、philosophyの確立であり、その下に維新の会の八策等々が推進されてこそだと考える。龍馬の船中八策は大政奉還から朝廷の許しを得た後に新政府綱領を書き上げた。そして、五箇条の御誓文、政治改革の方向は龍馬の船中八策に沿うものである。時代を比較すれば格段の違いである。

“日本の若者たちよ、平成維新に立ち上がれ!” 李登輝

私も船中八策に大いに励まされてきた。そして「脱古改新」中国的皇帝型統治という政治文化からの離脱を常に意識して政に臨んだ。しかし、現在の日本は戦後における種々の束縛から抜け出る事が出来ず、窒息状態に置かれています。今こそ、明治維新と並びうる平成維新を行うべき時でしょう。「船中八策」を基に外国人から日本を見てみます。

一義  官僚体制の打破転換を
何よりも主権の所在を正すこと。戦後、完全な自由民主主義国家となった。しかし、政治家、霞ヶ関官僚、一部業界団体の癒着は真の意味で国民主権が確立していない。これは総理大臣のリーダーシップの弱さであり、間接的選任で国民の直接的支持を得てない。又、一般の国民が国会議員になることは容易でなくそれは世襲議員の多さに表れている。熱烈たる使命感、日本をよくしたいという世界から尊敬される国にしたいという強烈な志を持って政治の道に進むのではなく、単なる職業として家業として政治家になる人が多い。これは主権在民という民主主義に反する。
⇒総理大臣になっても志も実践能力も弱く、国民の期待に応えられないからです。
⇒自信に満ちた発言が出来ない。

二義  国の容を論じたもの
速やかに霞ヶ関官僚体制、言い換えれば中央政権体制を廃止して新しい国の容を転換する必要がある。社会の閉塞感を打ち破ることは中央政権体制 ⇒ 地域主体の発想が不可欠です。

自虐外交からの脱却を!
三義  資源を持たない日本にとって、人材こそが何よりも重要であることは言うまでもない。未来を背負う人材をどう育成して行くか。日本は高い精神性と自然が調和して、禅や俳句など独自の美意識を持つ文化、芸術が生み出されて来た。
⇒品格と価値観をよくわきまえた教育者が教養を教えていたのが、私の受けた戦前の日本の教育でした。これからの日本の教育は、日本人の特質を更に高めていくものであるべきでしょう。
⇒戦前の教育の長所を思い起こし、戦後のアメリカ式教育から離脱し、日本本来の教育に移行していくことが必要です。日本の文化は世界に稀なる文化であり、どこの国にも見られない精神性や美意識を持ったものであることを皆さんに知ってもらわなければなりません。教育は日本伝統文化に適った方向に改革すべきです。
日本人の精神性や美意識は世界に誇るものだと考えます。

四義  現在の日本の外交は敗戦のトラウマによる自虐的かつ自己否定的精神から抜け出せてないように思います。反省は大切なことです。⇒過ぎると、自虐、卑屈になる。⇒健全な外交は不可能です。⇒世界から嘲笑されるだけ。
⇒私はまだかって「尊敬できる日本」という言葉を聞いたことがありません。アメリカへの無条件の服従、中共への卑屈な叩頭外交は世界有数の国力をつけた日本にそぐわない。(韓国に対しても中共と同様である)
「君は君、我は我なり、されど仲良き」武者小路実篤
中共の将来の不確実性を考えれば、日本も台湾も目の前の中共がもつ“にんじん”に幻惑されず「君は君、我は我」という毅然とした主体性を持った態度、そしてそうありながら良き関係を構築することが必要。
謙虚さを示しても外国人には理解されず、そのような姿勢は外国からかえって軽んじられ、軽蔑されるということをしっかり認識しておかなければなりません。自主独立の気力を持って主体性を持っていずれの国々とも積極的な堂々たる外交を展開すべきだと思います。

憲法問題を避けるな!
五義  現在の日本国憲法はアメリカが日本を二度と軍事大国にさせない為に押しつけた。第9条は日本の再軍備を禁止しています。
⇒アメリカの安全保障を依存するが、時代と共にアメリカの要請において種々の軍事行動への参加を求められるようになってきた。
⇒アメリカの都合よく使われている。躓き、行動を起こさない政治家に多くの心ある有識者が「アメリカにNO!といえる日本を」求めているが、日本のひ弱な政治指導者たちはこうした意見を理解しても行動を起こす勇気もありません。
気骨なき政治家ばかりで、日本は大丈夫なのですか?!

国民投票法施行2010年、憲法審査会は機能せず、国民の間でも憲法問題は論じられていない。⇒無関心 ⇒日本人のIdentityを不明確にし、国民の精神に大きく影響を与えていく。
60年以上も一字一句、改正も変更もされないのは異常です。
⇒日本国家は遠からず世界の動き、時代の動きから取り残され、衰退し始めるのでは・・・?!

六義  海洋国家日本が直面する世界情勢は急速に変化。一極支配(アメリカ)⇒多極化支配。(中共の覇権的行動は多極化を危険な方向へ変える可能性を持つ)
西太平洋の主導権争いは、中共の軍拡により米国に大きな負担を強いています。
⇒日米同盟の在り方が問われている。日米同盟の在り方を根本的に考え直す必要がある。片務的な負担を日本は負いすぎている。(安全保障に国家観ない故に)

日台関係を再構築せよ
七義  防衛の重要性述べたもの
日本の防衛にとっても大きな影響をもつ台湾の動向に注目すべき。台湾の変化 ⇒日本にとって思わぬ危険を見落とす。「台湾のIdentityの確立」に基づいて、台湾の民主化と近代化に向けて大きく舵を切りましたが、ここ10年進歩から後退しているのでは。サミュエル・ハンチントン⇒民主化への反動
台湾では民主化に反対する保守化が皇帝型政治による腐敗が続き、政府による国民の権利の侵害が行われています。台湾のIdentity ⇒中華思想の浸透で中共に傾き、歪み始めている。台湾にとっても日本にとっても繁栄と安全を確保するためにも、日台の経済関係を安定させ、文化交流を促進し、心の絆を固めることが不可欠である。日本の指導者には崩れつつある日台関係の再構築と強化に積極的に力を注いで欲しい。
日本の台湾軽視は ⇒日本国の危機を意味することを理解して欲しい!地政学的には、日本の命運を握っているのは台湾である。と日本の指導者はもっと真剣に考えるべき。
木を見て森を見ない外交政策は、日本に重大な問題をもたらすでしょう。

八義  日本経済が失われた10年の大不況に見舞われた根本原因は、日本銀行が1990年代以降、間違ったマネジメント、総量規制など行ったことにあります。一時回復期がありましたが、その際の経済成長はあくまで輸出に頼ったものでした。国家的プロジェクトをつくり、種々な分野で世界をリードするイノベーションに国家を挙げて取り組むところ、実際はほとんど取り組まず、国内の需要不足という根本問題を放置したまま、日本はリーマンショック以降の金融危機を迎えることになりました。インフレ目標を設定するほど、大胆な金融政策を採るべきです。大規模な財政出動によって経済を強化する事が必要です。個人金融資産 ⇒投資資金として市場にきちんと流れる仕組みを。⇒国民の将来の不安、老後の不安をいかに解消させるか ⇒老後の年金、医療、介護などの安心政策を政治家の人達は明確に打ち出す必要がある。海外への投資も進め世界経済に大きく貢献することです。

高い志をもって行動を!
明治と平成、時代が変わり政治、経済、社会、外交の各面で大きく実情は異なりますが、船中八策を道標とし、それを再検討することにより、今日の青年が誇りと自信を持って現実的実践による改革を進める事が出来ると私は確信しています。政治は常に改革され続けなければなりません。今の日本は明治維新以来最大の改革をしなければならない時です。素晴らしい日本を築くため若い皆さんが立ち上がり行動を開始されることを期待します。加えてアジアの一層の安定平和のために、台湾と日本のさらによい関係を構築していただきたい。アジア及び世界平和のためにぜひ日本の若い皆さん達が高い志を持って、積極的に台湾の若者達と力を合わせて下さることを切にお願いします。私の思いを込めた話をしました。
その他の言葉から
日本人は教育と政治の影響で否定的な価値観を持たされ心理的な鎖国に陥っている。
日本の形而上学的、道徳的価値観と品格を大切にし、日本の歴史を肯定しなさい。
日本は植民地の形ではあったが、インフラ建設等を通じて台湾の近代化に大きな貢献をした。
台湾人の好きな国、1番は日本の50%強
李登輝

長くなりましたが李登輝氏のメッセージを読み込んだ後に、もう一度維新八策を読んで下さい。橋下徹の「維新船中八策」に足りないもの、そして、日本人に足りないものは「何か?」が分ると考えます。

最後に、執行草舟氏の「根源へ」の名誉心についてからを添えます。

名著として名高い「マッカーサーの2000日」という本に書かれていることですが、GHQは占領が終れば日本人が自ら改正するに決まっていると考えて日本国憲法を作成しているわけです。押し付けられた憲法を独立回復後も後生大事に守る国というのは、歴史上存在しないでしょう。
日本国憲法の平和主義は陰険な思想です。
日本人が本当の平和主義を望むなら、貫こうとすれば相当の覚悟が要求されます。まず、自分の欲を捨てることから始めなければいけません。ところが、日本人は軍事的にアメリカに守ってもらい、何の覚悟もなく平和主義だと言っている。
私は日本国民だから何の欲も持たない良寛上人のような生き方を「日本国」がするというなら従います。外国がどんな理不尽な要求をしてきてもそれに従う。日本人がそういう生き方を望むのであれば仕方がありません。もちろん「国家」は滅びます。しかし宗教的とは価値があることです。
平和主義に徹して武力を絶対に使わないというのであれば、利益を捨てるしかありません。それが名誉ある国や人間の生き方です。又、戦うことができない人間や国は、私益を諦めるしかありません。それが道理というものです。
国益の第一は国家の名誉を守る事なのですが、今の日本の政治家の言う国益とは経済的利益を意味しています。政治家の本来の仕事とは名誉を守ることなのに、それを忘れている。ギリシャ、ローマの時代から不変です。
名誉心とは、自己の名誉を命より大切と思う心なのです。個性を持った人間として生きようとする者にとっては命、つまり魂なのです。名誉心を持って生きている人は、国家の危機にさいして命を捨てる覚悟を持って行動するのです。そういう人を「Patriot」つまり「愛国者」という。