弊社スタッフが交替でお届けする、ときに鋭く世相を斬り、ときに緩やかにあなたを癒す珠玉(?)の時事エッセイ。お仕事中の息抜きなどにお読みいただけたら幸いです。

2012/05/01 第53回  日本のお役所仕事!


東日本大震災は被災地だけではなく周辺地域を含め種々な被害を蒙りました。
東日本は製造業を下支えするサプライチェーンの重要拠点であることを国民は認識したのです。そして観光事業も主要産業であったのですが、被災1か年経過しても“国民の足は遠くにあって想うもの”が現実である。
そこで、観光を司る国土交通省観光庁は大震災復興支援を行政が行うことによって観光客を勧誘、国民だけでなく広く海外からの観光客を呼び込む為にホームページ作成を企画したのである。意味のある企画だと考える。

ホームページ作成は日本語版、英語版、韓国語版、中国語版で対応するものである。この作成にあたり大切な事は、被災地に来てもらう為の内容に魅力がなければなりません。そしてそれを表現する為には“翻訳する”業務は不可欠で重要な工程なのである。
観光庁は“翻訳する業務”を外部翻訳会社に委託することを選択したのである。
ここまでの推移に何ら問題はない。
因みに、弊社は翻訳業務に携わる集団・者として、立ち位置を定めアイデンティティを確立して日々実践することによって、多くのクライアントからご支持を頂戴し存続する会社です。
翻訳する! という業務は日本国、企業、人が海外と様々な場面で接する時に不可欠なコミュニケーションに供する言語を作成するものである。しかもクライアントの立場に身を措いて受託して成り立つ事業である。
与えられた条件下で最善の努力を積みあげた成果であっても言語表現に100%の満足度は頂戴できない。そこで委託側は成果物を検品、検証することを避けてはならないのである。
譬え、どんな製品でも検品、検証を実施し品質を確保して世に送り出すことは不変の条理である。
これらの事は翻訳業務を事業とする者として、又、委託側としてのイロハである。そしてクライアントから適正なる対価の支払いは翻訳会社存続の絶対的条件である。
扨て、観光庁の復興支援ホームページ作成問題を採り挙げたのは、観光庁が“翻訳する!”という重要な業務を外部委託した背景には
1.庁内に翻訳を専門とする人材を抱えていない事。抱えていたとしても
2.翻訳する!スピード即ち処理能力が業者の方が高く、コスト・パフォーマンスが外部委託の方が高い。
この点を認識しているか否かは分らないが外部委託に競争原理を導入すれば、業者は弱い立場ゆえに互いに牽制し合い、不本意ながら適正な代価を下げ続け受託するのである。
それでも公官庁やその幾多の外郭団体には膨大な翻訳量が存在する事を識っているから参加するのである。
委託側の発注論理は、費用は国民が納めた税金であり無駄には出来ないから、安ければ良い! 低い額を提示した業者に委託する為に競争入札(見積り)するのである。と、正論に聞こえます!?

此度の観光庁の復興支援ホームページがリリースされました。読者から英文表記に誤訳が沢山あると指摘を受けたのである。
例えば、
軽トラ(トラック型軽自動車のこと)  light tiger
生保内(おぼない 地名)関所  Barrier trace in life insurance
かまくら行事(雪でつくる)  mosquito event to use as a pillow
秋田(地名)  got tired
啄木忌  woodpecker mourning
固有名詞にはローマ字表記もあり、これが一字毎の読みの組合せであったのだ。
観光庁は日本語以外の言語をホームページから削除し検証に入ったのです。
(4月25日のYahoo!ニュースで修正結果をボランティアにチェック依頼! ここでも人の善意に依存する“根性まる出し”修正は誰が行ったのでしょうか)

読者からの指摘によって分った瑕疵は何処にある!
翻訳会社は復興支援に協力するつもりでホームページの翻訳業務を無償で引き受けたという。故にコストをかけなくて済む機械翻訳システムにて処理。更にコストをかけなくて済むチェック業務を省いて納入する。
無償で引き受けたのでチェック業務は受託条件にない。と受託した翻訳会社は言う。
観光庁側は、無償受託は復興支援という大義があると、翻訳会社の申し入れを受諾してしまった背景に前述した役所の外部委託事業に、安ければ良い! 仕事をした証があればよい! があったのだと考える。
両者は機械翻訳処理を事前に承知していたか否か。
機械翻訳処理の精度を知識として持っていたのか否か。
何れにしても観光庁は検証せずにホームページに載せリリースしてしまった。
これらの問題について観光庁と翻訳会社に“翻訳する!”業務に対して共有する高いレベルの認識もなく重要な業務を無償で遣り取りする不自然さを、双方とも意識していなかった。

ここから視えるのは、日本語を母国語とする民族は日本国民だけである。その国、企業、国民がグローバルに生き、成長する為には“翻訳する!”は不可欠で重要な作業なのである。
この原理、原則を関係者は等しく共有しなくてはならない。文章の表現に同一の答が無いと言われる翻訳業務だからこそ、相手を信頼しながら翻訳する!検証する!ことを失念してはならないのである。
公官庁、外郭団体は利を稼ぐ組織ではなく、税金を使って事業を推進する役を負う故に与えられた業務にかかる費用は安ければ良い!という考え方は行動指針たり得ない事を知るべきである。
公官庁には支払対象になる物品、サービスには時に応じた物価指数があって、適正な価格を示している。従って適正な代価を払って質の確保即ち自らの業務の質的向上を計らねば税を有効利用する資格はありません。
観光庁はホームページ作成の件で翻訳した内容を十分検証しないでリリースした事を謝罪したが、無償(ロハ)程高くつくものはない!事を分かったでしょうか?
常にお役所仕事と言われる程度しか働かぬ役人は要らないのである。
官は天から与えられた役人(エキビト)である。噛み締めよ!

又無償で翻訳業務を受託した業者は何処の何方か知らぬが、ロハだから機械翻訳の精度を識りながらシステムを使用、更にその侭提供し、問題になってからチェック業務は受託条件に無い!と言い訳する姿勢は不誠実の上、見苦しい!
同業他社も同じ穴の貉に視られるのは心外である。翻訳会社の看板を下ろすべきである。

この件を他山の石とせず弊社は常に原点に戻りつつ、前進して行く事を心、新に致しました。

追:
日本の外務公務員人数は2011年時点で5,800人。英国6,700人、ドイツ7,700人、フランス10,000人、米国25,700人(2010年)である。人口比で換算すると、日本がドイツ並み人数になるには、100人/年増で50年かかる。
外務公務員が少ないのには問題も多いいが、少ない故に役所仕事に終ってはいないか?
日本人は優秀な民族である。公務の質を高め、国益を追求して欲しいものです。